2014年9月16日火曜日

坂本直充詩集「光り海」+石牟礼道子詩 朗読会 熊本・水俣・東京






「天はあるか 地はあるか」という詩句がある。水俣病資料館館長 坂本直充さんが詩集を出された。詩の中核には水俣病がある。「毒死列島身悶えしつつ野辺の花」という句をお贈りしたい。
─石牟礼道子

「時は来た 水俣という重い空間の中で ことばが存在と等しくなる時まで 私は待ったのだ(詩『満ち潮』より)」そう彼は黙々と「待った」のだ。
…それにしても「ことばが存在と等しくなるという表現は凄い。艱難を全身に背負って生きてきた者が五臓六腑を震わせて絞り出した語句と言おうか。いのちの息づかいを漲らせた言葉の出所が、ここにもある。私はしばしこの詩句を見つめた。
─柳田邦男

ことばがうまれました
しずかになみだがあふれました
はるかな旅でした
ようやく海のひとしずくを手にとることができました
そしてこの詩集をおとどけします
─坂本直充「光り海」あとがきより


伝統芸能と現代演劇をつなげる公演活動を展開するアトリエ花習が主宰する朗読会です。
今年、熊日出版文化賞を受賞した元水俣病資料館館長・坂本直充さんの詩集『光り海』と石牟礼道子さんの詩を声と音楽でおとどけします。

この詩集を読んだ時、深く心が震えました。水俣の50年を思いました。私たちのこれからの50年を思いました。ぜひ、多くの方に聴いていただきたい詩集です。
お待ちしております。


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坂本直充詩集「光り海」+石牟礼道子詩 朗読会 熊本・水俣・東京

【出演】朗読:金子あい、笠井賢一
    音楽:設楽瞬山(尺八・能管・塤 他)

【熊本公演】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〇9月27日(土)17:00開演
〇長崎書店3Fリトルスターホール
(熊本市中央区上通町6ー23)
〇入場料:1500円
〇申込・問合せ:アトリエ花習(TEL090-9676-3798)
長崎書店(TEL096-353-0555、メールnagasaki@arion.ocn.ne.jp、または店頭にて)
http://nagasakishoten.otemo-yan.net/c4027758.html
http://nagasakishoten.otemo-yan.net/e862677.html

【水俣公演】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〇9月28日(日)14:00開演
〇もやいホール(熊本県水俣市牧ノ内3-1)
〇申込・問合せ:アトリエ花習(TEL090-9676-3798)
http://www14.ocn.ne.jp/~moyai-m/moyaikan.html

【東京公演】ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
〇9月30日(火)19:00開演/18:30開場
内幸町ホール(千代田区内幸町1-5-1)
〇入場料:2500円
〇主催・申込:アトリエ花習(TEL090-9676-3798) 

〇後援:藤原書店 〇協力:長崎書店

2014年9月14日日曜日

鶴見和子山百合忌『遺言 弊れてのち元まる』


ずいぶん日にちが経ってしまいましたが、去る7月31日は、国際的社会学者で思想家の故鶴見和子さんの命日でした。
昨年に引き続き、鶴見和子さんを偲ぶ「山百合忌」で鶴見さんの著書を朗読させて頂きました。今年も鶴見さんの形見の着物を着て大感激です。鮮やかでしっとりとした紺の縮緬地に草花と源氏香が刺繍されている素晴らしい着物と焼銀に古裂を取り合わせた(なんと表現していいのか分からない…)これまた素晴らしい帯でした。本当に袖を通すだけで気持が引き締まります。偶然にも私は鶴見さんと同じサイズで着丈も裄もぴったりでした。

私は残念ながら鶴見さんの生前お目にかかる機会はありませんでした。今更ながら本当に残念です。ご列席の皆さんはみな鶴見さんと親しかった方々ばかり。そんな皆さんの前で鶴見さんの著書を朗読するのはいささかどころかかなり緊張しましたが、大変光栄なことでした。
今回読んだのは、2007年に藤原書店より発行された『遺言 弊れてのち元まる』より最終講演の章です。鶴見さんはそこで、自分がいなくなったときにと、2つの言葉を遺言として残しています。

1つ目は「憲法九条を守って下さい」

大国の戦争に巻き込まれてはならない、そのためにはどうしたらよいのか。九条の祖型は、第一次世界大戦後の1928年に、アメリカの国務長官ケロッグとフランスの外務大臣ブリヤンがパリで戦争放棄の約束をした「パリ不戦条約」(ケロッグ・ブリヤン条約)です。アメリカの押し付けた思想ではない。人類の理想なのです。

2つ目は「曼荼羅の知恵をよく考えて下さい」

南方熊楠、クストーは生物の多様性、文明の多様性がどれほど地球にとって大事なことか説いています。曼荼羅というものはひとつの空間に複数のものが存在するということ。異なるものが異なるままに共に生きる道を探求する。気に入らないから相手を殺す、排除するというものではないのです。

私の朗読の後に、能楽師の野村四郎先生が地唄の佐藤岳晶さん、尺八の設楽瞬山さんの音楽と共に舞を舞われました。その静謐な空気の中での舞の素晴らしかったこと…同じ舞台に居られるだけで胸がいっぱいになりました。

四郎先生は大変ウィットに富んだ素敵な方で、お話がしゃれているだけでなくハッとするような名言が次から次へと飛び出してきます。我々芸の道を志す者にとっては四郎先生とご一緒して打ち上げでお酒を飲めるのはとっても楽しみです。鉛筆舐め舐め心の手帳に必死に書き留めました(笑)。


私はいま、この時に、このような素晴らしい方々とともに、鶴見和子さんの言葉を朗読できることを深く感謝し、そして多くの方々に「遺言」を読んで頂きたいと心から思っています。