毎年この日は、都内某ホテルで「新内協会」の新年会があり、私も末弟子として参加します。ちょうど同時刻には、向かいの宴会場で、某女子大の新成人の祝賀会が開催されており、艶やかな振袖姿のぴっちぴちの新成人が、植え込みすぎた花壇のようにごっちゃりとたむろしている光景をまぶしい思いで見ながら、我が新年会の会場に入りますと、新年の厳かな雰囲気漂う中に、かつてぴっちぴちでいらっしゃった師匠方やお弟子さん達の粋な着物姿が目に飛び込んで参ります。
「ぴっちぴち」と「粋」は反比例するのです。
さて、話は変わりますが、
先週、私の住む地域の小学校の理科の授業で、原子力のことをやったそうですが、子供たちのほとんどが、福島での事故の実態や原子力政策の真実や被曝のことを知らず、「電気ないとやばいから原発いるでしょ」「脱原発デモわかんねー」と言っていたそうで、先生も「原発ないと電気足りないからいるよねー」と教えたそうです。
私は直接授業を受けていませんから、先生がそれ以外に何を話したか、どんな材料を提示して子供たちに議論させたかわかりません。しかし、結論を聞いてがっくり。
ブルータスお前もか、先生あなたもか。
指導要領のせい?それとも先生自身の不勉強?
この期に及んで、政府と電力会社の言う通りに電気が足りないというイメージを子供たちにすり込んでいいのですか?電力が足りないというけれども、一年間8760時間のうちピークを越えたのはわずか5時間で、それもその時間の電気代を高くすれば容易に下げることが出来るというデータもあることを子供たちに教えましたか?ネットでいくらでも調べられる時代に、子供たちに自ら考えるチャンスを作ってやらない先生はだめですよ。上司に逆らえない場合は、せめて、原子力に対してはいくつもの意見があり、それを踏まえて君はどう考えるか議論する場にして頂きたい。こどもから考えるチャンスを奪うのは大人の身勝手です。
さて、改めて、皆さんにご紹介したい本があります。
今月号の通販生活の付録がこの映画のDVDだそうで、タイトルを耳にした方も多いかも知れません。
『みえない雲』
(グードルン・パウゼヴァング著/高田ゆみ子訳/小学館文庫)
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『みえない雲』コミック版
(アーニ・ハーゲ画/グードルン・パウゼヴァング原作/高田ゆみ子訳/小学館文庫)
※こちらは序章に「詩」が掲載されています。
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これはチェルノブイリ原発事故の翌年に書かれた小説で、著者のパウゼヴァング女史は当時、学校の教員をしており、チェルノブイリ事故の情報が子供たちにほとんど与えられなかったことから、子供たちが考えるきっかけにして欲しいと、あえてフィクションの小説として書いたそうです。ざっくりあらすじを申し上げると、主人公は中学生の女の子。西ドイツの原発が重大事故を起こし、彼女は家族を失い、急性被曝症で苦しみつつも自分の運命と向き合って生きていくお話です。
3.11以前の日本だったら、この小説は近未来のSFパニック小説だったかも知れません。しかし福島第一原発事故を経験した今の日本にとっては、残念ながら想像するに難くない小説となりました。もちろん、全く同じ事が日本で起こっているわけではありません。福島で避難を余儀なくされている方がお読みになったら目をふさぎたくなるかもしれません。不安に思われるかも知れません。
私はこの小説と映画のことを、昨年の3月に訳者の高田ゆみ子さんの講演で知りました。映画も見ました。高田さんのお話で素晴らしいと思ったのは、この本は20数年間、ドイツとベルギーの中学校の副教材となっていて、中学生がこれを読み、原子力のメリットデメリット含めて詳しく子供たちによる議論がなされてきたと言うことです。そういう人たちが今ドイツでは大人になっているということです。
子供たちは物事の本質を捉える能力があります。ぜひ、皆さんもお子さんと一緒にこの本を読んでみてください。そして、そこからいろいろ調べて考えることをはじめてみて下さい。
さて、以下の画像は去る1/5(土)に「PRAY FOR JAPAN 2013」という中高生がプロデュースするコンサートで、『みえない雲』コミック版序章の詩を朗読したものです。チェルノブイリ事故一ヶ月後にドイツの男女7人のグループによって書かれた詩は、まるで今の日本の状況のようです。間もなくアーカイブの公開が終わってしまいますので、よろしければぜひお聞きになって下さい。2つあるビデオクリップの上にある1つめの1:03〜です。
(朗読の前後に私が歌を歌っておりますが、それはご愛敬と言うことでお許し下さい。)
http://iwj.co.jp/wj/open/archives/47491
コンサートをプロデュースした中高生の子供たちに私は一抹の光を見ました。彼らの意欲や素直さ、素晴らしさ。どうかもっと多くの子供たちがつながって、どうしようもない大人どもを乗り越えて、この国の希望となってほしい。そう願わずにはいられません。
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