2009年3月22日日曜日

今日千秋楽です

あれっきり更新しなくてごめんなさい。
稽古場や本番中のレポートはこっぱずかしくてできませんでした。
なぜなら、毎日めいっぱいだからです。
いわば、格闘技のリングに上がって
帰ってくるみたいなんです。
へとへとすぎて余裕がなかった。

それはともかく
多くのお客様にご来場いただきました。
本当にありがとうございました。
我々の仕事は観て下さるお客様がいなければ成り立ちません。
お客様に育てて頂いているのです。
そして陰で支えてくれるスタッフがいなければ作れません。
皆さんいろいろありがとう。
舞台に上がる役者はお客様の前で表現すると言う役割を
担っているだけ。
精一杯勤めるのみです。
ファーストレディーになるのは
あと一回

行ってきます。



2009年3月7日土曜日

ポツドール「愛の渦」を観た。


岸田戯曲賞受賞の話題作だというので
行ってみました。新聞に載ってたし。
男女の客がセックスをするために集う裏風俗店が舞台。
ものすごく今風な若者の今風な会話が繰り広げられる中で
カップル成立すると二階のベッドが並ぶ部屋に行き
セックスをする。
皆裸の体当たり演技で、
それを観るために毎日通うマニアがいるのではと、
おばさんは心配したくなるくらいだ。
どうでもいい感じの今風の若者会話なんだけれど、
ぎりぎりのところでやっぱりなにか文学になっている感じがして、
絶妙なバランス感覚が素晴らしいと思った。
そこが下品なエロ芝居にならない大きな力だと思った。
寂しさとか、それこそ「愛」って何だろう、と思わせてしまうんですよ。
細かいところの描写も説得力があったね。
キャラクターで気に入ったのは、店員の造形がすごく効いていて面白い。

ガッツリした骨太な構造の古典的な舞台劇と比べるのも変だけど
全体にはすごーく映像的な感じ。
ただ、女の子とかの会話がほんとに若い今風なので、
これ、あたし出来ないなと思った。そういう風にしゃべれない。
すっごい努力してもしゃべれない気がする。
歳、ですかね?
ま、女子大生の役でキャスティングされるわけじゃないから
いいんだけど。
しゃべりの世代間ギャップをつくづく感じた作品でした。



クラウド・ゲイト・ダンスシアターを見た


うーむ!!すごく良かった。。。。
ダンスという西洋の表現言語を日本人やアジア人が踊るとき
すごくうまかったとしても、何か最後の部分に違和感がつきまとう
ような気がしているのだが、この作品はものすごく説得力があった。
台湾のコンテンポラリーダンスカンパニー、
クラウド・ゲイト・ダンスシアターの芸術監督のリン・ファイミンは
中国語圏で始めてのコンテンポラリーダンスカンパニーを作り、
カンパニーのダンサーたちは、その独自の世界観を表現するために、
モダンダンス、バレエは勿論、太極導引、瞑想、武術、書道などを
習得しているという。
まさに、それを感じる素晴らしい驚異的な身体能力であり、
彼らの生まれ育った文化に、西洋のダンスを完璧なまでに
翻訳することに成功していると思った。
絶妙な振付けや視覚的なバランスは
はじめから終わりまで白い紙に墨で一筆で書を書くがごとく、
無駄がなく、必然性を感じた。美術館を巡ったような感じだ。
素晴らしかった。いやー、素晴らしかった!


第85回粟谷能の会を観た

私の能の師である粟谷明生先生が「安宅」を演じました。
安宅は10年前の初演の時も観て、今回は2度目。
10年の時間の経過がどのような変化をもたらしたか。(自分にも)
興味深く拝見。
結論。
私の脳みそはいろんなことを忘れてる、ということ。
実は10年前は勧進帳の台詞を丸暗記して、
仲間で稽古していたせいで
「安宅」を観て感極まって大泣きに泣いたのです。
まるで、自分が弁慶か義経になったような気分でした。
しかし、10年経って、台詞はまるで思い出せない、
観た舞台もおぼろげにしか覚えていない…。
ひどい!ひどすぎるあたしの脳みそ!
まあ、そんな訳で、すっかり初心者気分で観ました。

沈着冷静な弁慶というのがぴったりの弁慶でした。
橋掛りを出てくる時にその人物の様子がとても良く分かるのですが
緊張感がありすごく良かった。
勧進帳を読み上げる時が説得力があって
10年前が動的な面白さを感じたとしたら
今回は静的な味わいが深くなったように感じました。

今回図らずも印象に残ったのは
子方とアクシデント。
義経の子方は居ずまいに気品と華があって
しっかりとした構えと運びで、役割を果たして
素晴らしかったと思います。
途中義経の笠が何度も頭から落ちてしまうアクシデントがあり
流れが中断されてしまったのは、きわめて残念でした。
しかしそのような中でも義経は慌てることなく耐え抜き立派でした。
義経そのものだったと思います。

でも、なんで笠が何度も落ちたんだろう?
素朴な疑問。
現代的な少年の形の良い小さな頭には大きすぎたのか?
しかし、どんな方法だって落ちないようにすることは可能であり
スタッフ…っていないんですよね、お能には。
大人の責任かなぁ…なんて
思ったり思わなかったり。

やっぱりその中断は観客としては
集中力が途切れてしまって
その後気持ちをもう一度盛り上げるのが大変だったかな。

お能を習っている者の一人としては、
一人でも多くの人に興味を持ってほしいと願い
時々、観たことないという方をお誘いするのですが
どうしたらお能のハードルがもう少し低くなるのかな〜
と考えてしまいます。
うーん。