2013年6月2日日曜日

自分の顔、好きですか?

きれいなお姉さんは好きですか?

と、年頃の少年があこがれをもって言うCMがありました。
イケメンは免疫力が高いという研究結果を先日ネットで読みました。その実験では女性に関しては可愛くても可愛くなくても免疫力に差は出なかったそうです。じゃ、きれいなお姉さんじゃなくてもいいじゃん。
しかし、人間はきれいなものが好きです。

マリヴォーの「いさかい」は、戯曲を深く掘り下げなくても、ただ読むだけでとても面白いのですが、何度も読んでいて、気づいたことがあります。

19年間隔離され、他の人間を知らないで育った子ども達は、自分の顔を見たことがないようなのです。言葉も食事もある程度の文化的教育も受けているのですが、彼女らの育った部屋には鏡はなく、ガラスに映る自分の顔すら、どうも見たことがないようなのです。実験は徹底してますね。すごい。だから、はじめてみる自分の顔にエグレという女の子は驚きます。驚いたあとの反応が彼女らしいのですが、これは当日のお楽しみ。マリヴォーから見ると女性はこのように見えたのでしょうかねえ。

そして、もうひとつ、原文のフランス語や英訳では表現されていて、日本語訳では十分表現しきれない要素があります。彼女たちが、「他人」にはじめて会う時に、初めのうち「人称」がめちゃくちゃなのです。「あなた」「彼」「彼女」「それ」「人間」「人」の使い方がすごく変なのです。これは自分以外の人や性別の認識に慣れていない、人称代名詞をどうやって使っていいのか分からないといった感じが表されているのだと思います。人の関係性って社会的なものなんだなぁと今更ながら思ってしまったりして。実は私自身このことをものすごく面白いと思ったのですが、その変さを日本語に上手く訳せないということと、私が一人で演じるので人称代名詞をごちゃごちゃにしてしまうと、全てがちんぷんかんぷんで分からなくなるので、これはあきらめてひねりすぎないようにしました。

マリヴォーの作品は一般的に、恋愛心理の機微を細やかに描写した、独特の言い回しや文体に特徴があり、これらをマリヴォダージュと呼んでいます。格調高いと言うよりは社交界の日常語に近かったようで、「いさかい」で最初と最後に現れる貴族達の会話は、きっとそのようなものだったのでしょう。

「いさかい」=論争、はこの物語のあらゆるところで起きます。他人同士のみならず、自分の中でもいさかいは起きています。
その様子が興味深いのです。

それにしても、10人も出てくる芝居は、基本的には10人の出演者でやるべきですね(笑)。その方がうんと楽。一人でやるのは無謀(笑)。

しかし、そこに山がある限り、うっかり登ってしまいたくなるのです。
私を通して相手の登場人物が見えたら嬉しいなあと思います。

さて、会場の絵空箱は、カフェを併設。芝居中も飲食して頂きながらご覧いただけます。終演後は、私たち4人も毎日飲もう〜と言っていますので、お時間のある方はぜひ残っていただき、いろいろなお話ができればと思っています。

美味しいお酒が飲めますように、頑張ります。

ぜひ、お気軽に「ご見物」にいらして下さい。


<公演詳細>
art unit ai+ 実験公演
マリヴォー「いさかい」
La dispute de Marivaux

【原作】マリヴォー【構成・演出・出演】金子あい【音楽・演奏】永田砂知子
【美術】 トクマスヒロミ 【照明】横原由祐

【日時】
2013年(全5回公演、開場は開演の30分前)
6月12日(水) 19:30開演
6月13日(木) 14:00開演/19:30開演
6月14日(金) 14:00開演/19:30開演

【会場】
Performing Gallery & Cafe 絵空箱  http://esorabako.com/
(地下鉄有楽町線「江戸川橋」駅1番出口徒歩2分)
新宿区山吹町361誠志堂ビル1階

【料金】
前売 2,800円/当日 3,300円/学生・研究生2,300円
 (一名につき料金+1ドリンク700円オーダーが必要です。 全席自由)

【主催】art unit ai+

【ご予約・お問合せ】
art unit ai+ (アートユニットアイプラス)
tel:090-6707-1253
e-mail:auaplus@gmail.com






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