2011年8月16日火曜日

福島ツアー日記 その4 川内村〜白河市(終)

翌朝、ブルースとアンディと私は、犬のハヤテ君(めちゃめちゃかわいい子なのだ)とともに、近くの山を散歩しました。日差しがぎらぎらと照りつける中、ところどころに家と田んぼが広がる山あいの緩やかな坂道を登っていきます。川沿いの木々には植物が絡み付いて地面に濃い影を落としていました。

とても静か。


ズボッと出てきたはやて
林業を営むお宅のすぐ脇の山に小さな鳥居があり、私たちはそこから細い山道を登りました。まもなく小さな小さな古い祠のまえにたどり着きました。山の神様か雨乞いの神様か、この地に住む人々が代々、山とともに生きてきた証。

ブルースは祠の脇を通り過ぎ、さらにその先の尾根道をずんずん進んでいきます。190センチ超のブルースが露払いのように、蜘蛛の巣を振り払い絡まりながら「くもさんごめんなさいね~、オー、納豆巻きネ~」とかいいながらとても嬉しそうに登っていくのです。ブルース以上に嬉々としているのがハヤテでした。先になり後になり時折茂みの中に見えなくなったと思うと、思いがけないところからズボッと飛び出してきます。





「あっちの方向に第1原発があるネ」

立ち止まってブルースが指差す方向を私たちは眺めました。
あの山の向こうに無残に崩れ落ちた原発の建屋がある……。

うしろはいわき方面の山
この山には放射能が降り注いでいる、私たちが分け入ってきた尾根道も間違いなく汚染されている……鋭い爪で心臓を引っかかれたような痛みが走りました。

取り返しの付かないことを、本当に取り返しの付かないことをしたのだ。私たちは。チェルノブイリの今を思うと暗澹たる気持ちになりました。

「ここが終点」

ブルースが立ち止まった先を見ると鳥居と祠がありました。ここの鳥居はとてもめずらしい!ブリキの煙突でできているのです。まるでオズの魔法使い!お参りをして、今来た道を引き返しました。帰りは一番小さい私が先頭。後ろの大男たちは結局、蜘蛛の巣だらけになりました。


帰り道、避難して留守だという隣家からじーーっと
こちらを見る視線が……?


山羊。。。。。おどろいた。剥製ではなく生きている山羊さんでした。
山羊はこっちを見たまま、ひどく大きなため息を一つ、つきました。

その後、ブルースとアンディは目の前の川でひと泳ぎ、大満足の様子。冷たいのに!










いよいよ、私たちは白河市に向かって出発しました。

行きがけに草野新平の天山文庫に立ち寄りました。しまっていたけれども、美しい家屋と庭のたたずまいは見事。















白河に近づくとむわっとべたつくような暑さが襲ってきます。街中は圧倒的に緑が少ない。山から下りてきたばかりなので余計にそう感じました。

白河総合運動公園の仮設住宅は街に近くて、幅広い世代が入居しているそうです。
仮設住宅の集会所はどこも同じ造りで、到着後、早速私たちは準備に取り掛かりました。日曜日の午後で、出かけている人も多いらしく、今までの中で一番お客様が少なかったのが少し残念でした。でも音楽好きなわんちゃんがとってもおとなしく聴いてくれたのがとても嬉しかったです(笑)。



 さあ、また車に荷物を積んで、一路、最後のコンサート会場である関の里に向かいます。途中、いろいろと足止めをくって、会場に着いたのが予定よりもずいぶん遅くなってしまいました。待ってくださった皆さん、ごめんなさい!ありがとうございました!


このホテルの宴会場は音の響きがとても良くてのびのび演奏することができ楽しいひとときでした。






3日間5カ所のコンサートが終わりました。


もっと長い時が経ったようです。沢山の方々にお会いしました。震災は悲しいことだけれども、このことがなかったら出会わなかった一期一会の出会い…。音楽と共に一緒に笑って泣いて歌って。皆さんにとって少しでも気晴らしのひとときになれば本望です。これはカート&ブルースが一番はじめに言っていたことですが、来るたびに私達の方こそ沢山の優しさと元気をもらいます。
名残惜しくて、東京に帰りたくない、そんな気持ちになりました。
また、秋に伺います。それまで福島の皆さん、どうか、お元気でお過ごしください。ありがとうございました。(終)



0 件のコメント: