2010年10月13日水曜日

SPAC(静岡芸術劇場)『令嬢ジュリー』を見た

先週末、はじめてSPACを見に行った。

──(財)静岡県舞台芸術センター(Shizuoka Performing Arts Center : SPAC)は、専用の劇場や稽古場を拠点として、専属の俳優、専門技術スタッフが活動を行なう日本で初めての公立の文化事業集団です。舞台芸術作品の創造と上演とともに、優れた舞台芸術の紹介や舞台芸術家の育成を事業目的として活動しています。1997年から初代芸術総監督鈴木忠志のもとで本格的な活動を開始。2007年4月1日から新芸術総監督宮城聰に引継がれ、トップランナー鈴木忠志が切り拓いてきた道を、さらに発展、充実させていきます。── 

とSPACのHPにあるように、日本で専属の俳優でじっくりと舞台作品を作るのは珍しく、一度見たいと思っていた。しかも宮城さん。

今回の演目はストリンドベリの『令嬢ジュリー』。フランス演劇界きっての知性派フレデリック・フィスバック演出。ローラン・P・ベルジェ美術。

SPACの公演日は基本的に土日。東京辺りからも見に行く人がいるからということだろう。電車代がかかるじゃないか〜と思われた方、SPACは太っ腹ですよ。各公演1回ずつ東京(他)から観劇無料バスを運行しているのだ!チケット代金だけで行って帰ってこられるなんて、なんと言うおもてなし精神なんだろう。そして、さらにすごいと思ったのが、平日は中高生鑑賞事業としてほぼ地元の若者に見せている。令嬢ジュリーも例外ではない。但し今回の演出は官能的という面はそれほど強調されていなかったから、高校生でもOKかな(笑)。

私はベルジェの美術にかなり興味があった。書き割りではない三次元的な舞台空間のおもしろさに期待。
真っ白な出入り口のない室内空間を作り、客席側を除いては、全ての壁があり天井もある。奥には竹林にも思えるような竹が何本も立っている。
手前の空間には真っ白な丈の低いシステムキッチンと一段低くなったぐるりと囲んだソファがあり、非常に現代的なスタイリッシュなマンションのモデルルームのようである。天井が普通にあるので舞台用の照明器具はつかえない。そのかわり普通のダウンライトや蛍光灯を使っていた。

この作品の中で、身分の差というものはどうしたって「キーワード」にならざるを得ない。しかも現代日本の我々にはきわめてリアリティがない。
フィスバックはそのことについてはあまり重要なファクターとして描いていなかったように思える。登場人物はそれぞれ抑圧された状況から自由になりたいと願っている。
専属の俳優達は時間をかけて丁寧に稽古を積み重ねてきたことがわかる。フィスバックは時に肉体と言語を切り離したような、演技を要求しているようで、不思議な感覚になる時があった。
終盤真っ白な空間の中が、見えるか見えないかの薄暗い中で深紅の明かりに染まっていたのは印象深かった。内蔵の中のようだった。

敢えて一ついわせてもらえば、限られたメンバーでやる場合、必ずしも役にぴったりなキャスティングが出来るとは限らないのだなと思った。観客はかなり素直に本能的に舞台の物事を見ているから、やはり、役にピッタリのキャスティングであればある程、理解しやすい、ということかな。

でも、SPACの取り組みは素晴らしいと思う、もっとこういう公共ホールが増えて欲しい。
とても刺激を受けた。

あ、会場で、一昨年ウルファウストで共演した、すがぽんに会いました。10/30〜の今井朋彦演出の「わが町」に出演するんですって。久しぶりだけどしばらく話しているとすぐに共演している瞬間に戻るのがいいよね。すがぽん頑張ってね!


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